丸の内で1st Loveを聴いたら泣けた

 着慣れたスーツに見慣れた街。部屋中探しても初心のひとかけらも残ってないであろう疲労困憊の私。多分ここから世界でいちばん遠い場所の歌だなあ、と思いながら『1st Love』を再生する。移動時間の気分転換にかわいいかわいい流星くんの声を聴いてよっしゃもうひと仕事頑張りますか〜!と気合を入れるつもりだった。テイクアウトしたカフェラテを片手にKITTEの屋上庭園でぼーっとしていたら、東京駅の駅舎がなんだか滲んで見えた。遠くの高層ビル群とすきまに覗く東京タワーが、暮れゆく街並みに揺らめいている。丸の内の真ん中で聴く「初恋」。キラキラした淡い桃色、夢と希望しかないはずのファーストアルバムは、彼らよりだいぶ大人の私にとってはなんだかとても泣ける音楽だった。

せっかくなので此処に感想を残しておこうと思う。音楽の知識は全くない本当に素人のただの感想です。

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初恋LOVE

 この曲に込められた甘さと切なさのさじ加減が好きだ。キラキラした希望に溶かされたほんのひと匙の迷いと戸惑い。ジャニーズのデビュー曲って俯瞰で世界や概念を歌っているイメージがあったので(それはそれでアイドルに与えられた特権という感じで好き)、徹底して「僕」目線で進む等身大の歌詞がとても印象的だった。「なにわ男子さんのために作られた歌だな〜!」と何度聴いてもそのたびに感じる。初恋とCDデビューの心情をオーバーラップさせる描写には素直に「こうきたか〜!」という感動があるし、「王道だけど等身大、自然体だけど王子様」という彼らのコンセプトを明確に提示しているとても素敵なデビュー曲だと思う。なにわ男子さんを応援していると、ひとつの季節を眺めているような気分になる。初心LOVEは私にとってそんな「季節」の象徴みたいな楽曲。いつか時が流れて現在進行形のmy first loveがくすぐったくなってしまう日が訪れたとしても、それでも7人で笑って初恋を歌っていてほしい。

Dreamin' Dreamin'

 なにわ男子さんの開花宣言。夢が叶う瞬間、まさに今その扉が開こうとしている一瞬を切り取ったお祝いの花束みたいな楽曲。どのグループにもひとつはありそうな王道ソングだが、歌詞のあちこちに散りばめられている問いかけの「?」が印象的で、誰も置いていかない、いつだってこちらを振り返ってくれるなにわ男子さんらしさもきちんと掬いあげて表現してくださっているな~と感じる。「王道ソングの新訳」というか、誰が歌ってもきっと素敵だったであろう楽曲がなにわ男子さんと出会うことで更なる世界観を持った作品として完成していく感覚が好きだ。あと嵐を応援していた時代に良いな~だと思う曲のクレジットを調べたら絶対に名前があったyouth caseさんに再会できて嬉しかった。

サチアレ

 思い出補正というか感情補正が強すぎて楽曲のレビューがあまり浮かばない。仕事もプライベートも積んでいてマジで人生の底だと思っていた時期に出会った、なにわ男子さんと私が始まった歌です(私が勝手に始めただけですが)きっと世界中に存在する「あの日君と出会えなかったらこんな素敵な朝を知らなかったろう」の何万分の一が、こうして今日もここで生きています。

meduse-ff.hatenablog.com

アイドルが歌う「朝」って”夜を越えた朝”(SixTONESのStrawberry Breakfastみたいな)と“一日がはじまる朝”に二分されると思うのですが、なにわ男子さんは一日のスタートとしての朝を歌わせたら最強だと思う。

月火水木君曜日

 かわいい。一音聴いたらアイドルソングだとわかるキラキラした音とメロディが大好き。『It's a 恋です、純情you know?』の音ハメ感がたまらん。なにわ男子さんはみんな若いけどそれでも現役学生という訳ではなく、何より学生時代からアイドルとして働いていた彼らにとってこの楽曲が描いている学生生活ってある意味ifに近い世界観のはず。なんだけどなにわ男子さんたちがテストも部活もカラオケも満喫してる姿はなんか容易に想像できるな!?と思う。これから先何年経っても時々思い出したみたいにコンサートで歌って欲しい。私がもしなにわ男子さんと同世代のオタクだったら、この曲を聴きながら一緒に大人になっていきたかった。

妄想っちゅーDiscooooooo!!

「一緒に初心LOVE踊ったやん!!!!!!!」←1stLove大西流星さん好きなパート大賞

この曲を聴いているときが一番「なにわ男子さんって歌上手いな~!」と思う。7人の表現力が存分に発揮されていて、いわゆるトンチキソングとかコミックソングに見せかけて実はめちゃくちゃ聴きごたえがある楽曲。いろんな小技が効いていて楽しい。特に西畑さんは声色だけで表情までなんだか浮かんで見える。次のBrand New Heroineと比較したら歌い方というか声色まで全然違うので本当に凄い。

Brand New Heroine

 2022年7月13日にスーパームーンの夜があったことはたぶん一生忘れない。仕事の関係でこの日から翌日にかけてが今年のスーパームーンだということは前々から知っていたので、『fromスーパームーン』という歌詞に触れたときなんだか嬉しくて、私にまで招待状が届いたような気持ちになって、あの夜に空を見上げて月を探した想い出まで含めて特別な歌になった。シャンデリア、ダイヤモンド、スーパームーンエスコートしてくれる彼…この世のキラキラを全部詰め込んだ宝石箱みたいな歌詞がクライマックスで『アンバランスで繊細』を『だから綺麗』だと肯定してくれるシンデレラストーリー的な展開が本当に大好き。歌詞も音もすべてがキラキラしていて、願わくばいつか映像化してほしい。この音楽の世界観を自分の目で眺めてみたい。

ちゅきちゅきハリケーン

 このインパクト特盛ソングがトンチキではなく普通に可愛い歌としてメンバーにもファンにも大切にされているなにわ男子さんが好きだ。この曲が笑いのネタにならない世界に生きている人たちだからこそなにわ男子さんのファンになったんだとさえ思える。ファンだけが知っている言葉や数字やポーズの由来とか、曲ができるまでの経緯とか、「エピソードを共有できる歌」はとにかく強い。TikTokやインスタといったタッチポイントを通してエピソードをどんどん育てていく戦略は見ていて興味深かったしたくさん楽しませて頂いた。西畑さんのグループ愛と良い意味での計算高さというか頭の良さが垣間見える歌詞だと思う。そして流星くんの振り付けは世界一かわいいのは勿論のこと「素人でも頑張ったら踊れる」の絶妙なラインをついた難易度設定が完璧で、だからこそ一般人の中年男性からドラマの共演者さんまでこれだけたくさんの方が動画をアップするムーブメントになったのではないだろうか。「ファンだけが理解できる歌詞」と「誰でも踊れる振り付け」のバランス感覚が本当に天才で大好き。

Welcome to アイラブユー

 爽快で勢いのいいラブソング。シチュエーションが特に限定されていないから、いろんな場所で、いろんな人が、「自分の歌」として聴くことができる。コンサートには参加していないので100%推測だが、現場でこそ映える、生で聴いたらより一層盛り上がる系の楽曲だと思う(現場で聴いた方、どうでしたか?)あとこの曲のパート割がとても好き。メンバーがだんだん集結していきサビで全員揃って最強になるのが戦隊モノ感が強くて良い。

シンシア

 疾走感のあるドラムが気持ちいい、ロックサウンドでストレートな愛を叫ぶ歌詞。好きだ!!!!!!!という感情の瞬間最大風速がみごとに表現された楽曲。「“誰か”じゃなくて“君”がいい」というこの上なくシンプルで飾りのないサビが印象的。歌詞カードを見返していて気付いたのですが、落ちサビの流星くんのソロだけ「“誰か”じゃなくて“君”がいい…!」という表記で。このパートを聴くときは、「…!」を声で表現している流星くんに注目して欲しい。抑えきれない感情がどんどん高まっていく疾走感。好きだ。こちらも現場で聴いたらより一層盛り上がる楽曲だと思う(いまのところ答え合わせできる予定が無いのがやるせないね…)

The Answer

 ドラマ主題歌らしいキャッチーな表題曲でありながらも、「全員をかっこよく見せてくれる」曲。ちゃんと全員の見せ場を盛り込んでいるのが良いな~と思う。あと発売当時大橋くんのダンスが好きすぎてダンプラめちゃくちゃ再生した。

Emerald

 エメラルドの石言葉は「希望」「幸運」「愛」。人を導く力があると言い伝えられている宝石。『僕のために君が笑う 君のために僕が歌う』という歌詞もあるように、アイドルとファンの関係性を連想させる楽曲。応援しているアイドルが歌う『暗がりでも見つけられる星になるから』、世界で一番欲しかった約束をここで結んでしまった。この歌詞の「僕」は「君」に対しては一切何も求めていない。「僕が夢を叶えてあげる」「僕が君を笑顔にする」ではなくて『僕から贈る夢』『僕の笑顔 君に届け』なんです。決して直接何かをしてあげることはできないけど、それでも愛のある方向に導いていく。本当に見上げる星みたいな関係性だなと思う。なにわ男子さんの歌う恋愛じゃないラブソングは、どうしてこんなに優しくて泣けるんだろう。

Timeless Love

 シンシアが瞬間を歌った曲なら、Timeless Loveは永遠を歌う曲。もちろんそんな意図は無いかと思いますが、対になっている感じがしてこの2曲を続けて聴くのが好きです。Timeless Loveを歌っているときの大橋くんは、本当に永遠を越えてやってきたんじゃないかと思ってしまう。永遠の愛を知っている人の声をしている。

ダイヤモンドスマイル

 勢い余ってもう書いてしまっていたので割愛しますが、

meduse-ff.hatenablog.com

エメラルドとダイヤモンドが散りばめられたファーストアルバム。個人的にこんなに響いた音楽は久しぶりでした。挑戦的な試みの作品があるわけでもなく、ビッグネームが楽曲参加しているわけでもなく、ただアイドルがアイドルであることだけを抱きしめて届けてくれる歌。私の好きになった“アイドル”が2022年にまだ此処にいてくれること。それが本当に嬉しかったです。

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 いつの間にか丸の内はすっかり夜に染まっていた。空はもう真っ暗だが、それでもこの街の灯りは消えることは無い。私が望んで自分の足で歩いてやってきた一晩中眠らない街。『1st Love』、ここから一番遠い場所だと思っていた歌はいつの日か私が確実に通ってきた歌だった。宿題も部活もテストもう無い人生だけど、それでも、あの感情を私はいまも覚えている。それは形を変えて今もきっと此処にある。遠くの方に今まさに発車しようとしている新幹線が見えた。ここ数年はなかなかゆっくり帰っていなかったけど、近いうちに帰省してみようと思った。

 10年後の「ねえ、今もだよ?」も、笑顔で聴ける自分でありたい。だからもう少し頑張ろう。丸の内で聴いた初恋で、初心を思い出した夜だった。