枯れても咲いたんだ ~「SZ10TH」感想~

 私が今まで体験してきたアイドルの10周年コンサートは「おかげさまで無事に大きくなりました!」という一種の通過儀礼であり感謝祭だったけれど、今回のSZ10THはまるで性質の違うものだった。どう見ても無事ではない瞬間が確かにあって、揺らいだ時期も存在して、それでもどうにか辿り着いたこのステージ。10周年を迎えたことをこの世の誰よりも本人たちがいちばん喜んでいるんだろうな、と思わせる時間だった。もしかして喜びというよりも安堵と言ったほうが近い感情なのかもしれない。ファンに向けてこの2021年に出来る最大限のパフォーマンスを届けてくれたと同時に、形や速度を変えながらも10年間一緒に泳いできたメンバーへの想いが感じられる瞬間が何度もあった。こちらを向いているのと同じくらい、隣を向いている時間が長かったんじゃないかなあ。今まで100%ファンに向けられていた感謝の言葉が、隣に立つメンバーにも向けられていたこと、お互いに支え合っている姿をこちらに少し見せてくれたこと、外向きでありながらもとても内向きな祝福がSZらしくて嬉しかった。

 オブジェもセットも銀テープもない、歓声も聞こえない、過去と比べたらあまりにも”足りない”だらけのこのアニバーサリーは、いつかまた元通りのコンサートを開催するためのひとつの通過点。この2021年に歩みを止めなかったことが、今回さまざまな事情で参加を断念した方に”次の機会”を届ける選択になると信じたい。

 足りないなんて言葉を選んでしまったけれど、狭くなってしまったのは世の中という水槽で、減ってしまったのは水という演出で、彼らは変わらずに全力で泳いで魅せる淡水魚でした。今年もとても楽しかったです。GWの思い出をありがとう!どうかオーラスまで無事に完走できますように。横アリお疲れ様でした!