風磨くんとonline

 2020年3月29日、25歳最初の風磨くんはどこか少し寂しそうに見えたことをよく覚えている。勿論これは私の主観に過ぎない話だけれども。「Johnny's World Happy LIVE with YOU」YouTubeライブ配信でオンラインに乗った風磨くんの姿。この日を境に全国各地でコンサートが届ける"空気"は"電波"へと変わり、"いつか"を願う終わりの見えない日々が始まった。

 

 情緒とか感情とか雰囲気とか。そういう目には見えないものを創ることが、掬い上げることが、とても上手な人だと思う。「センスとは普通の人が価値を感じないところに価値を判断できる能力であり、言い換えるなら他人には無い定規を持っているということ」という言葉を以前知ってとても感銘を受けたのだが、その言葉を借りると風磨くんは情緒のセンスを持っているひとだ。エモいセンスとも言えるのかもしれない。そんな風磨くんの瞳に、瞬く間にエンタメがオンラインに移行していく世界はどう映っていたのだろう。技術の進化によって限りなくタイムラグの少ない安定した生配信が実現した今でも、空気は電波を越えられない。この時期の風磨くんは「リモート飲み」や「オンラインライブ」「SNS」に関する質問に対してあまり手放しで前向きな言葉は選んでいないという印象もあった。「この瞬間はもう二度とこない」「一期一会」を誰よりも大切にしているひと、至極自然な感情だろう。こうして私は配信のたびにその瞬間を全力で楽しみつつも、一方で"風磨くん"と”オンライン”の親和性について度々考えさせられることとなった。

 風磨くん自身のパフォーマンスを含め彼の創るコンテンツに惹かれたファンとして、風磨くんがやりたいと望んでいる表現ができるだけその手触りと温度感を保ったまま受け手まで届くような環境が欲しい。ずっとそう思っていた。そして、今まで間違いなくそれは”現場”という空間だったのだ。

 

 昨年とても印象的だったエピソードがある。勝利くんがラジオで語っていた風磨くんの言葉だ。「配信ライブで画面がブラックアウトする瞬間があると、配信を見ている自分の顔がモニタに反射してしまう。その瞬間にお客さんが現実に置いていかれるかもしれない」というようなニュアンスだった。これに気付くのは、観客が現場に何を求めているか把握しているということではないだろうか。世界観に没頭したいという願いを、風磨くん自身が実感として知っているということ。アイドルが好きなひとがアイドルを職にした強さ。新しいプラットホームを分析と思考で自分のものにしようとする姿。らしいなあ、と感じた。そして数回に渡る延期・中止を経て配信に切り替わったライブツアー「POP×STEP!?」では画面自体にエフェクトをかける演出など、風磨くんのままで、風磨くんらしくて、そして新しい表現が随所に見受けられた。風磨くんご本人はあまり具体的なオンラインへの配慮について言及することはなかったように思うが、配信ライブをたくさんたくさん観て研究したということが言葉の端々から伝わってきた。風磨くんとオンラインの可能性が少しずつ見えてきた時期だったように思う。

 

 そして2021年3月6日、「Johnny's Village」に登場した風磨くん。25歳最後の風磨くんはずっと笑顔で、とにかく楽しそうで、オンラインをめいっぱい満喫していた。これは主題とは少し離れてしまうが、私が思う風磨くんの好きなところがたくさん詰まっていた。きっと一般企業で勤めていたとしても順調に出世していたんだろうと思わせる頭の良さと立ち居振る舞い。打算も計算も出来るのに、ひとよりずっと情緒が豊か。そんな、社会人と表現者の両軸を生きている風磨くんを感じられる素敵な時間だった。

 空気は電波を越えられない。ふんわりとスモークがかかった会場独特の湿度を、あの心地よい疲労感を、画面を越えて共有することはこれから先もまだまだ難しいだろう。でも、それでも、こうして一年が経とうとしている今、画面越しでも私はちゃんと嬉しかったし、楽しかったし、切なかったし、この時間が終わることが寂しいと確かに感じられた。この心が震えるような感覚は現場で感じていたそれに限り無く近いものだなあと、『Heavenly Psycho』を歌う風磨くんを見つめながらぼんやりと考えていた。

 先述の演出に関するエピソードやきっとたくさんたくさん考えてくれたであろう選曲、時間も距離も電波も越えて手元に届いた銀テープ。この一年間の至るところに散りばめられた風磨くんとSexyZoneの思考の欠片たち。

 ああ、共有はできなくても、共感はできるのかもしれない。それが、オンラインライブについて一年間考えた末に私が辿り着いた答えのような形をしたものだった。

 

 2020年をただただ喪っただけの年にしなかった、しないためにきっと考え抜いた風磨くん。そんな風磨くんが好きだなあと数回のライブ配信を通して改めて実感した年でした。

 風磨くんがそうであるように、私も願うことを止めずに今日も"今日"について考え続けようと思います。 25歳最後の夜に笑顔だったこと。オンラインのお陰でその姿を見られたこと。とても嬉しかったです。

 ”いつか”を願い続けるこの日々を、いつか同じ空気を共有しながら語ることができる日が来ますように。風磨くんが四季を満喫して、横浜アリーナを思いっきり走ることが出来る世界になりますように。

 風磨くん、26歳のお誕生日おめでとう!