オレンジ色のスカートを買った

 気づいたらクローゼットの半分以上がスーツとシャツになっていた。アラサーの会社員が合理性を追求した結果、黒とネイビーとグレーの整然としたグラデーション。もちろんジャニオタだから毎年現場前にはそれなりに浮かれて服も買っていたが、そんな特別な日のワンピースは片隅に追いやられて、手が届きやすい位置にはいつも数着のスーツとそのインナーがかけられていた。なんなら最近は現場服もモノトーンを選びがちになっている。仕事服と私服の境目が無くなりつつあるクローゼット。"それなりに"どこへでも行ける装いは、だんだん可動域が狭くなりつつある心の現れだったのかもしれない。

 もちろんただただカラフルで在ること、だけが良いわけではないと思う。常にオールブラックのファッションを貫いている友人の、鮮やかなメイクに映える漆黒の装いは本当に素敵だ。色数や明度は関係なく、ただ自分が好きな色を身に纏う、意志のある色選び。思想の有る行動。私がいつのまにか忘れてしまったこと。(逆に超効率重視で「俺は服装に囚われない!」と宣言し、同じ服を大量に買って毎日着まわすジョブズみたいな上司もいるのだがそれはそれで大いにアリだと思う)

 何を着ていいのか、何を着たいのかわからない。なんとなく黒とかネイビーとかグレーで自分を塗りつぶし、年々乏しくなるファッションや美容に対する感情を「年相応を身につけた」と無理やり変換しながら生きていた。そんな私を変えたのは、彗星みたいな出逢いだった。

 私はつい1ヶ月ほど前に大西流星くんのオタクとして爆誕を果たした(経緯は前回やたら仰々しく語ってしまったので割愛する)。「遂に私もメンカラピンクのオタクか〜〜〜!」という謎の確信を持ってまあ一応念のためにとメンバーカラーを調べてみたらピンクじゃなかったあの日の衝撃。「なんでピンクじゃないの?!」って声に出したことありますか?多分あの驚きは一生忘れられないと思う。グループ内の可愛い担当=ピンクという自分の凝り固まった安易な方程式を恥じた。そういえばなにわ男子さん全員可愛かった。そして本当のメンカラピンクを担う道枝くんは、確かにピンクを放つ人だった(個人的には"桃色"という響きがとても似合う方だな〜と感じている)

 流星くんのオタクになって1ヶ月、今のところ唯一手元にある映像作品である勝たんコンの円盤をひたすら再生した。9時入り26時解散の労働が続いた週はYouTubeにあるダイジェスト映像を深夜の首都高を疾走するタクシーの車内で眺めていた。ソーダポップラブを観ながら「可愛い」という理由で涙ぐむ大人。今思えばシンプルに怖い。新規ハイもここまで来るともう信仰の域である。多分近しい友人達は私のあまりの変わり様を本気で心配していると思う。

 なにわちゃんたちのステージ衣装はとにかく本当に可愛い。もはやまぶしい。「可愛い衣装」を実現させるスタッフさんの高い技術と、プロが創り上げたスキルの結晶をまとって立つ7人の共同作業によって最大限に発揮されるステージの魔法。特に「可愛い衣装で可愛く立っている自分たち」で在ることへの一切妥協のないプライドを感じる瞬間がたまらなく好きだ。そして、労働の隙間を縫って「今日も可愛い!!好きです!!!」のエナジーチャージを繰り返すうちに、なんとなくあの暗い色のクローゼットを変えてみたいと思うようになっていたのだ。ほんのひと月前まで「何が着たいのかよくわからないからとりあえず無難で…」と言っていたのに、自分でも驚く気持ちの変化だった。私の世界に突然現れた彗星みたいなオレンジ。鮮やかな七色に夢中になっているうちに思い出したこと。キラキラしたものが好きで、鮮やかな色に惹かれて、華やかな世界にあこがれて、そうやって生きてきた結果が今じゃないか。私の好きな色はちゃんとここにあったんだよ。

 仕事がようやくひと段落した昨日、私は新しいスカートを購入した。これを着て出かける予定も特にない。着る機会があるかもわからない、それでもいい。好きだと思える色の服をもう一度買えたということが嬉しかった。あと「明日どれにしようかな〜ってリップを選ぶ時間は、翌日のモチベーションを高めるための習慣」と語っていた流星くんの記事がとても印象的でずっと大切にしたいなと思う言葉だったので、ひさびさにコスメもたくさん買ってみた。自分で自分を幸せにできる人に私もなってみたいと素直に思えた。

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 一般企業に勤めるOLがなにわ男子さんを好きになって、自分の好きな色をほんの少しずつ取り戻しつつある話でした。スパンコールも羽根もミニスカートもきっと着れないけど、立派な大人と言われる年齢だけど、私は私なりにもう少しだけ好きな色を着てこの人生を生きてみようと思う。スタッフさん、長尾くん、いつも素敵な衣装をありがとう。7人とも、ずっと可愛く居てくれてありがとう。あなたたちの可愛いに救われている大人が、きっとこの世界には大勢います。どうか身体だけに気をつけて、みんながキラキラした鮮やかな夏を過ごせますように。